任意整理
任意整理とは
弁護士・司法書士が債務者の方の代理人として、消費者金融、クレジット会社等の債権者と個別に交渉を行い、債務返済に関する合意し、その合意内容に従って返済する手続です。
分割返済の回数は36回(3年間)が基本ですが、債権者の同意が得られれば、60回(5年間)程度まで長期分割が認められる場合もあります。(勿論、一括返済も可能です。)
裁判所を通さない手続なので、債務者の方の手続的な負担は少なく柔軟な解決が可能です。
また、破産・民事再生とは異なり、官報に公告されることもなく、他人に知られる可能性が最も少ない手続です。
任意整理の手続の流れ
相 談 | |
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依 頼 | ※必ず委任契約書で契約条件を明らかにいたします。 |
※和解合意が成立するまで返済は止めていただきます。 | |
受任通知 | ※弁護士・司法書士介入後、貸金業者の直接取立ては禁止されています。 |
取引履歴 開示請求 | |
※1~3ヶ月(非協力的な業者がある場合は時間がかかります。) | |
利息制限法による引き直し計算 | ※グレーゾーン金利を適法金利に計算し直す作業を行います。 |
※調査結果のご報告及び返済方法についての打合せを行います。 | |
和解提案+交渉 | |
和解合意 | ※和解合意書を取り交わします。 |
返済開始 | ※債権者への返済を開始していただきます。 |
任意整理のメリット
債務額の減額
任意整理の最大のメリットは、高金利の貸金業者とのキャッシング取引の場合、業者が請求している金額よりも借金が減ることです。
「グレーゾーン金利」のところで説明したように、引き直し計算をして払いすぎた利息を順次元本に充当していくと、結果的に債権者から請求を受けていた金額よりも借金を減らすことができます。
さらに進んで、残債務元本が存在しない状態になった以降も返済を継続していた場合は、過払い金の返還を請求することができます。
※注:最初から利息制限法の利率以下で借入れている場合は、債務額は減りません。
※注:最初から利息制限法の利率以下で借入れている場合は、債務額は減りません。
※注:利息制限法の制限利率
債務額(元本) | 利率 |
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10万円以下 | 年20% |
10万円超〜100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
将来利息のカット(無利息)
利息制限法の範囲内の利率で借入れをしている場合には、引き直し計算をしても債務額は減りません。では、任意整理をするメリットが全くないかといえばそうではなく、将来利息をカットできるというメリットがあります。
将来利息とは、毎月の支払で支払っている利息のことです。元本が大きければ大きいほど、利息の負担は重くなります。将来利息をカットできると、“支払っても、支払っても、借金が減らない”という状況からは解放されます。
具体例として、「平成20年1月1日時点の債務額が720,000円で、同月より毎月25日に20,000円ずつ返済する」場合に、将来利息がない(0%)のと、年18%の将来利息がつくのとではどれくらい違いがでるか、見てみましょう。
利率18%の場合は、完済するまでに4年4ケ月かかり、返済回数は52回、返済総額は1,037,673円です。これに対し、利率0%の場合は、完済するまでに3年かかり、返済回数は36回、返済総額は720,000円です。返済期間に1年4ケ月、返済総額に約30万円の差が生じます。このように、将来利息がカットできれば、返済の負担はとても軽くなるのです。
※注 任意整理の場合に、貸金業者が将来利息の免除をしなければならないという法律の規定はありませんが、一般的に返済が困難になった債務者の経済的更生のため、貸金業者には協力すべき義務があるとの理解に基づき、将来利息を付けないよう交渉で求めます。ただし、交渉によっても合意を得られない場合があります。
債権者の取立停止
弁護士・司法書士から債務整理の依頼を受けた旨の通知(受任通知)を受けた貸金業者は、法律により債務者の方への直接取立が禁止されています。
当事務所では、任意整理のご依頼いただいた場合、直ちに貸金業者に受任の通知を行います。その結果、貸金業者からの取立・督促はすぐにストップします。
以後、貸金業者は、受任している弁護士・司法書士のところに連絡をして来ますので、債務者の方は、安心して生活を建て直すことができます。
返済の一時停止
任意整理を正式にご依頼いただいた場合、直ちに貸金業者に受任の通知を行います。
これにより、貸金業者からの取立が止まるのは上記のとおりですが、ご依頼者の方には、債務額の調査が終了するまでの間、債権者への返済を一時ストップしていただきます。
依頼を受けた弁護士・司法書士は、受任の通知とともに、各業者に過去の取引履歴の提出を依頼し、債務額の調査を行います。
この期間に、ご依頼者の方には、平静を取り戻していただき、客観的にご自分の収入・支出の状況を見つめ直していただきます。
任意整理のデメリット
信用情報機関への登録
弁護士・司法書士からの受任通知により、信用情報機関に事故情報が登録されることになります。俗に「ブラックリスト」と言われているものです。これがもっとも大きなデメリットと言えると思います。
一般的には、債務の完済後、5年から7年くらいの間、ローンの審査が通らない、クレジットカードがつくれないなどのデメリットがあります。
※信用情報機関とは…ローンやクレジットカード等に関する個人信用情報を登録し、銀行やクレジット会社、消費者金融等の貸金業者が貸付を行う際、与信取引上の判断のための参考資料として提供する機関。
特定調停と任意整理の違い
債務名義にならない
特定調停の場合、調停が成立すると、貸金業者には、調停調書という債務名義(※)が与えられます。
債務者の方が、調停で成立した内容に従った支払いができない場合、直ちに給与や預金の差押等の強制執行が可能になります。
任意整理の場合、貸金業者と債務者との代理人を介した合意に過ぎませんので、債務者の方の支払いが遅れても、貸金業者はすぐに強制執行をすることはできません。強制執行をするためには、改めて裁判手続を経て、判決等の債務名義を取得する必要があります。
※債務名義 強制執行によって実現しようとする権利が確かに存在することを公に証明する文書です。例:判決、調停調書、公正証書(強制執行認諾文言付)