過払い金返還請求の時効について②

現在消費者金融やカード会社と取引されている方の中には、いわゆる「グレーゾーン金利」が廃止される前から継続して取引されてきた方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、このようにグレーゾーン時代から続くまだ継続中の取引に関して、その中で生じる過払い金や時効の問題について紹介したいと思います。

取引が継続中でも過払い金は返してもらえる?

そもそも、まだ終了していない返済途中の取引や継続中の取引について、過去に払い過ぎた利息の返還を求めることはできるのでしょうか?

消費者金融やカード会社との取引において、法律上支払うべき額を超えて利息を払ったことがある場合には、それぞれの超過支払分は、 その都度元本の返済に充当したものとして最初から計算し直す必要があります(引き直し計算)。取引が継続中だからとか、今は適法な利率に変わったからといって、過去に払い過ぎた利息分だけを別途に返還してもらうということはできません。

ただし、上記のように順繰りに元本充当の計算をしていくと、その分、実際の残元本は減っていきますので、本来支払うべき残債務の額は、今現在消費者金融やカード会社から請求されている金額(契約上の残額)よりも少なくなります。

そして取引の期間や金額によっては、たとえ継続中の取引であっても、引き直し計算をすることで元本が完済となり、実際には取引全体について既に過払いの状態になっているということもあり得ます。その場合、契約上の残債務の額にかかわらず、その取引については、もはや返済を続ける必要はありませんし、発生している過払い金については、当然、返還を求めることができます。

取引が継続中でも過払い金は時効消滅する?

過払い金返還請求権の時効の起算点は取引終了日です。
一般的な消費者金融やカード会社などとの取引では、基本契約による取引が継続している限り、新たな借入や返済が繰り返される可能性があることから、原則として、過払い金返還請求権の時効が進行することはありません。
しかし、中には、取引の途中にもかかわらず時効に注意しなければならないケースというものもあります。
(なお、前回のブログでも書いたとおり、2020年の改正民法施行後は、ご自身の取引で過払い金の返還請求ができることを知った日も起算点(5年経過で時効)になることがありますが、以下の説明は、便宜上、10年の時効期間についてのみ記載しています。)

ⅰ)取引が分断している場合

同じ業者や同じカードで長く取引をしていて、一見、同一の取引が継続しているように思われるときであっても、途中で何度か完済や再借入れを繰り返しているような場合、具体的な事情によっては、それが連続した1つの取引とは認められずに、複数の分断した取引として扱われることがあります。その場合、それぞれの取引について「取引終了日」が存在することになります。過払い金の返還請求権は取引が終了した日から10年で時効となりますので、分断した取引のそれぞれの「取引終了日」の中に10年以上前の日付のものがあると、その取引で生じた過払い金返還請求権については時効が成立してしまっている可能性があります。

貸付停止措置前に生じた過払い

  • 請求した場合、過払い金は全額返還を受けることができます

貸付停止措置前に生じた過払い

  • 過払い金①・過払い金②は、どちらも取引終了日からそれぞれ10年
    を経過
    しているため、時効によって消滅し、返還を受けられません
  • 過払い金③は、取引終了日から10年以内(時効未完成)なので、請求した場合、全額返還を受けることができます
  • 過払い金④は取引が継続しているため、時効は進行しません請求した場合、全額返還を受けることができます

どのような事情があると分断した取引(別々の取引)とされてしまうのかについては、取引期間の長さや取引していない空白期間の長さ、途中完済時の契約書返還や失効手続きの有無、再借入時の契約条件(前取引との差異)など、様々な要素を具体的な事情ごとに検討しなければならず、専門的な判断が必要になります。判断が困難な事案や微妙な事案については、法的知識・経験の豊富な弁護士等へご相談されるとよいでしょう。

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ⅱ)借金を完済する前に途中で返済をやめてしまった場合

今回のブログの前半でも述べましたが、取引が継続中(返済の途中)であっても、内容によっては、実際は既に過払いの状態になっていることがあります。そのような場合に、過払いであることを知らずに、契約上の債務を残したまま返済をやめてしまったとしても、取引が途中である以上、過払い金の時効は進行しないようにも思われます。しかし、消費者金融やカード会社の中には、長期の延滞に対し自動的に取引終了(解約)となることを契約内容として予め定めていたり、或いは、延滞後に取引を終了させる旨の通知をしてきたりするものもあります。
そのため、業者からの厳しい請求がないことに安心して、返済をしないまま10年以上何もせず放ったらかしにしていたり、通知書面を無視し続けたりしていると、気づかないうちに時効が完成し、過払い金を取り戻す権利を失ってしまうということが考えられます。

もちろん、途中で返済をやめている以上、引き直し計算をしたとしても、過払いにはならずに、依然借金(返すべき債務)が残っているというケースもあるでしょう。また一方では、その残っている借金自体が時効を迎えてしまっているということも考えられます。そのため、取引の途中で返済をやめてしまっていた借金について、過払い金の時効を気にするあまり、何年かぶりに債権者と連絡を取ったり取引を再開しようとする場合には、正しい知識と慎重な対応をもって臨まないと、かえって、それまで免れてきた業者からの請求を再開させてしまったり、不用意なやり取りによって、時効の完成した借金について債務を承認させられてしまうなど、ご自身の利益を損なう場合もあるので注意が必要です。ご心配な方は、債権者に連絡する前に、まずは弁護士等にご相談されることをお勧めします。

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ⅲ)貸付停止措置がとられている場合

過去に支払を長期滞納したなど何らかの理由で、業者から貸付停止の措置を取られたことがあるような場合にも注意が必要です。
一般的な消費者金融やカード会社との取引では、借主と業者との間には「取引の途中で発生した過払い金は、その都度請求はせずに、その後新たな貸付が行われた場合に、その貸付金債務に充当する」という合意が存在すると解釈されており、そのため、取引が継続中で新たな貸付が見込まれる限り、時効が進行することはありません。ところが、貸付停止措置がとられた場合には、新たな借入金が発生する見込みがなくなるため、上記貸付停止措置の時点(新たな借入ができなくなった時点)から時効は進行すると考えるべきだという主張が業者側から出てくることがあります。
仮にこうした主張が認められると、たとえ継続中の取引であったとしても、貸付停止措置前に生じていた過払い金については停止措置から10年で時効により消滅することになります。また、貸付停止後に生じた過払い金については、過払い金の発生時すなわち各回の支払の時から時効は進行することとなり、10年を経過した部分から順次、時効で消滅してしまいます。

貸付停止措置前に生じた過払い

  • 上記どちらの場合も、緑色部分の過払い金の時効期間は進行していますので、10年経過とともに順次消滅していきます。そのため、請求した場合に返還を受けられるのは、結局のところ、発生から10年未満の部分に限られます。
  • そもそも、貸付停止措置から10年以内の返還請求であれば、過払い金が貸付停止措置の前に発生したか後に発生したかに関係なく、全額返還を受けることができます。

もちろん、単に業者による貸付停止措置がなされたという一点だけをとらえて、過払い金の時効起算点について上記のような主張が常に認められるわけではありません。とは言え、業者との返還交渉に関してはやはりスムーズにいくとは考えにくく、激しい争いになることが予想されます。交渉に際してある程度の専門的な知識や経験が必要となるこのようなケースでは、そうした知識・経験の豊富な弁護士等に相談することには大きなメリットがあると思われます。

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まとめ

グレーゾーン金利時代から続く取引で、現在も返済途中や継続中のものについては、取引を続けながら、過去に払い過ぎた利息分だけを返してもらうということはできません。ただし、引き直し計算によって元本が既にゼロになっており取引全体が過払いになっている場合であれば、それ以上返済を続ける必要はありませんし、取引を終了して過払い金を返してもらうことも可能です。

また、返済途中や継続中の取引であっても、
① 過去に完済・再借入れ(取引の分断)の経験がある
② 延滞状態のままになっている
③ 貸付停止措置を取られたことがある
などの事情があると、過払い金の返還請求権について時効が進行している可能性もありますので、お心当たりのある方は、ぜひ、弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。

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